名栗(なぐり)とは、角材や板に「突き鑿」や「ちょうな」、「与岐」などで独特の削り痕を残す日本古来からの加工技術の事を指す。
古くから日本建築において門扉等の門材や垣、濡縁、腰板などに使われ、特に数寄屋建築においては欠かせない存在であり、また洋式の建物においても古くからルーバーや棟木、廻縁、階段格子などにも取り入れられていた。
そして現在では店舗内装にも注目が集まっている。
元来、山から丸太を運搬する際に虫に食われないよう皮やシラタを削っていく加工から派生したものと考えられ、名栗と言う名前の由来は天保年間、丹波の杣(そま)職人が六角の柱に施された栗材に削った柄が格好良いとされ、語呂合わせもあって呼ばれるようになった説がある。
*杣職人・・・きこり
ただし奈良時代にはすでにちょうなによる仕上げはあったとされており、いつの時代からこういった化粧としての仕上げが用いられるようになったかは不明だと思われる。
製材した材に「突き鑿(のみ)」と言う道具を使用し、文字通り「突き取る」名栗加工をしたものを『突きノミ名栗』という。
材を横から突くため筋が付いたような一直線の柄が描かれ見方によってクッキリと陰影が写りだされる効果がある。
「ちょうな」や「与岐」よりも後に出来た名栗加工であり、初めはU字の枠はなく鑿だけを用いて座って名栗っており、使い勝手が悪いため、創業当時の当店番頭が鉄の枠を拵(こしら)えたと聞く。
創業(明治34年)以前、いつ頃から「突き鑿」を用いた名栗が生まれたのかは不明である。
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釿(ちょうな)で木の表面をハツリ取る名栗加工をしたもので、一般的に「ハツリ」と呼ばれる。
材を地面に固定させ、木目に添って名栗るため幅広であっても加工は可能であるが、木目の無い材や縄目になった柾目は名栗ることが困難である。
樹種や材質によっては出来ないものがある。
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当社では2000年頃より、ちょうなによるハツリを派生させた京風ナグリを編み出した。
それによって、従来では出来きなかったユニタイプのフローリング材や幅ハギ材、
積層材にも施すことが可能になった。但し一つひとつの柄がちょうなの場合と比べて四角い感じの柄である。
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主に写真のように材の長さがジグザグしたように作り出す。
日本建築様式として、縁側に取り付ける名栗の事を竹縁と言う。
山名栗が名栗の起源だと考えられる。
丸太(原木)を主に六角に製材し、ちょうなにて名栗を施したもので、
用途としては門柱や控え柱に使用される事が多く、丸太の曲りを生かしたものや、直材にして施すものと2種類(曲がり・直材)ある。
基本的に、山名栗は「芯持ち」「一等」「生材」である。
一方向に突いた柄のことをいう。
板に対して直角や斜めに突く。
この柄が基本となり、そこから派生したものが網代柄である。
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主に一方突きに施した板などを写真のように組み合わせたものを矢型と呼ぶ。
門扉として使うことが多い。
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六角に製材したものに各種名栗加工を施したものを六角名栗と呼ぶ。
主に垣や外格子として使われる場合が多く、外部での使用には栗が圧倒的に用いられていた。
京都の町屋では駒寄と呼ばれ、もっとも名栗がポピュラーに使われている。
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亀の甲羅に似ていることから付いた名前であり、90㍉~120㍉ほどの幅の材に真ん中が大きく、両サイドを小さく名栗った柄である。
一方突きを互い違いにするとこのような柄になる。
柱、ルーバー、棟木や廻り縁に使用される事が多い。